校正&校閲、キャリア相談は完全無料




つい先日のこと「おとなの新路相談室」という聞いたことがないサイトの運営事務局から1通のメールを受信しました。本文中に案内のあった当該サイトを訪問してみますと「株式会社仕事旅行社」が展開するオンラインでのキャリア相談サービス事業とのこと。数年前に加入した「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」のサイトで公開している私の個人ページに連絡先として載せてあるメールアドレスを使って送信してきたんですよね。同協会でしか使用していない Gmail アドレスでしたからその点は明白です。なるほどね、そういうところに目をつけて営業をかけてきたということです。


このオンラインサービスでは「ホスト」と呼ばれるキャリアコンサルタントが、相談者と1対1のビデオ通話で当該の職業に関する情報を聞かせてくれたり、助言を与えてくれたりするそうです。私に送信されたメールの用件は、このキャリアコンサルタント、即ちホストになっていただけないか、その登録手続きをお願いできないかというものでした。そのこと自体に問題はなかったのですが、①実名での登録が原則、それは構わないと引いたものの、②顔写真も掲載、というところでダメだなとなりましてホスト登録は見送りました。ただ、①②の上をいってトドメ的にアウトだったのは、③相談者から料金を取るシステム、という点なんですね。


「ビジネス」です。運営事務局のマージンは 20 %、なるほどそうでしょう「ビジネス」ですからね。言い直しましょう「ビジネス」であるなら当然のこと金銭が発生します。料金はホスト各自で自由に決められるようでした。数十名の登録済みホストをざっと見た限りではありますが 30 分無料、60 分無料というホストも各1名見受けられましたので、相談者から料金を取らないという選択肢もあることは分かりましたが、そんなホストはごくわずかで大方は堂々金額を掲げていました。安い場合で 60 分あたり 1000 円から 2000 円、ただし 2000 円以下に設定しているホストは少数派。その他大勢が 3000 円から 60007000 円の間、さらには 8000 円台、9000 円台のケースもあり、最高額は 10000円でした。


この事業が第一に、日本で根強い「王道・正社員」とは異なる働き方に焦点を当てていること、第二に、その道を考え始め、できるものならと望んでいる「新しい人々」の出現を示していること、第三に、現時点ではマイナーであるものの、すでに「王道・正社員」以外の働き方で収入を得ているこれもまた「新しい人々」の存在に価値を置いていること、これら3点いずれについても現代を映し出しているという点で好ましい方向性ではありますが、金銭が発生することについては相変わらずと言いますか、旧態依然としていますよね。代わり映えしない。


「いやいや、綺麗事ではいきませんよ。ギブ・アンド・テイク、お互いが潤うということですね。只より高いものはないとも言いますでしょう?」― そんな台詞がこれまた相変わらず、旧態依然として飛んできそうですけれども、相談事一つにしても「他人同士」となると当然かのごとく金銭が飛び交い、誰かが労力を投じてあるいはさほどの労力を投じることもなく収入を得ることができるという従来の構図について「そうではない形が現れてきてもよいのではないか」という考えが頭をもたげるんですね。実際このやり方ですと、相談をしたくても経済面で足踏みをするケースが出てくる可能性がある、その余力がある人とない人との間に機会の格差が生じてしまう、その金額を苦にせず払うことができる人と、その金額では残念だが払うことはできないと諦める人が出てきてしまう、そこのところが根本的に今の社会の大きな問題の一つではないかと思うんですね。


もう一つあります。相談者が自分の友人・知人であったりする場合には、金銭を求めることはありませんよね。しかしそれ以外の人となると当たり前のように支払いを求め、相談者も当然のこととして支払いに応じるという、この「人々を分け隔てている境界線」というものが「どうにも存在する、それがこの世の現実なのだ」という、私からすれば単なる思い込みにすぎない「常識」じみたものを保持するのかしないのか、その立場を取るのか取らないのかは選択可能なはずなんですね。この種の助力、支援の行為に金銭を介在させるのかさせないのかは選びとることができるものなのだという視座があってよい、そしてそうした視座に立つ人間はもちろんのこと私以外のあなたや誰かであってもよいわけです。


世界は札束の経済に満ちており、日本もまた例外ではない、ただしその札束の経済が人や社会を温めているのか富ませているのか潤しているのかと見渡してみれば、そうとは言えない現実がある、その現実に対してアンチであるのかないのか、仮にアンチであるならばそれをどのように示すのかという「ステージ」において、ひとえに自己に依拠する「人間としての正しい態度」というものが現れ出てきてもよいのではないか、この息切れのする世界、社会を従前どおりの札束に任せた経済と人間社会の古臭い常識で覆い、その檻を叩き壊すことなしに、はたして世界も日本も立ち行くのかという疑念と抵抗の表れとして、ほんの一つ、されど一つ(笑)私の「校正&校閲キャリア相談」は完全無料で行なっています。先日の投稿記事「校正&校閲の仕事に興味がある方へ」ではその旨を明記しませんでしたので、あらためてここにお知らせする次第です。ご質問、ご相談は「CONTACT」に記載のメールアドレスまで、どうぞお気軽にお寄せください。


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