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校正入門、はじめの一歩は独習可

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「校正実務は未経験、やはり通学制の専門学校に行くのがベストだろうか、あるいは通信制の講座を受講するのはどうだろうか」等々、校正の学び方について悩んでいる方にお勧めしたいのが「とにかく実践」の第一歩として、書き込み式の練習帳を用いた模擬校正を「まずはやってみる」という入り方です。校正とは云々という類いの書き物は、エッセイにしろ指南書にしろ、あるいは教本でさえあったとしても、それらをどれほど読み進めたところで「実務に触れる」ことはできませんよね。「ああ、そうなのか、ふ~ん、なるほどね」という〈外から眺める校正〉は後回し、〈自分が当事者になる校正〉を優先するのがよいのではないかと思います。言うまでもなく校正は、実務をもって校正でもありますのでね。 上の写真は、 日本エディタースクール 出版部 発行の『校正練習帳』という本で、タテ組編とヨコ組編がそれぞれ出ています。定価はいずれも  500  円(本体)プラス消費税で1冊  550  円。試しにちょっとやってみるのに金銭的な負担も少なく、分量も各  60  頁ほどの薄い本ですから、あまり時間を要さないという点でもお薦めです。端から事細かに書かれている重量級の本を摑んでしまうと挫折する可能性も出てきますのでね。まずは大網を掬うという心づもりでトライするには格好の教材だと思います。他に用意するものは芯の太さが 0.38 以上 0.5 以下の赤ボールペン1本で  OK 。ちなみに私が使用しているのは、三菱鉛筆のジェットストリーム。ペン先の滑りが良く発色が鮮やか、つまり濃く書ける、さらには速乾性も高いという点で一択です。 下の写真はタテ組編の見開きですが、右頁は「①誤字を直す」、左頁は「②文字を入れる」となっています。1項目の学習が1ページで完結するコンパクトな構成なんですね。 ピンクの囲みの部分には、校正記号の標準的な書き方と入朱例(赤字の入れ方)が表示されており、次は入朱例のとおりに赤ペンを使ってなぞり書きを行う箇所、そして今度は自分自身で入朱する箇所が続きます。頁の下段には「こんな点にも気をつけよう」という見出しで、上段で示された以外の書き方や注意事項が記されています。この見開き  2  項目を終えると、そこで学んだことをきちんと習得できているかを試す練習問題が次の頁に用意されているんですね。「校正本番」の機会が短い間隔で訪れ

公正取引委員会と在宅校正者の長電話

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Photo by Vinicius "amnx" Amano on Unsplash 以前、公正取引委員会の希望で電話ヒアリングに応じたことがあります。所得補償保険の掛け金が優遇されることただ一点が魅力で数年前に加入した団体「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」から、ある日1通のメールを受信、協力要請のあった任意のアンケート調査に回答、返信したのが事の始まりでした。このアンケート調査では末尾のほうで「回答後に公正取引委員会から調査協力の依頼があった場合に応じるか応じないか」という趣旨の質問があり、私は「応じる」と答えました。同じ回答をした複数名の中に私も加えられたということでしょう、当該機関担当者から初めて直接のメールを受信したとき、自分のフルネームの近くには「No.△△」という形で2桁の数字が併記されていました。 そのメールには「この調査協力の依頼は、あくまで調査が目的であり、フリーで仕事をしている個々人に生じた、あるいは生じている個別の問題について相談を受けるものでもなければ、その解決に助力するものでもない」という趣旨の断り書きがありました。「ごちゃごちゃした話は聞きませんからね。こちらの知りたいことだけを話してくださいね」ということでしょう。加えて「電話で話す時間は 30 分程度」という趣旨の文言も記されていました。「長話はお断りです。こちらが聞くことだけに答えてくれれば 30 分で足りますからね」ということでしょう。 しかしこちらが何も言っていない、尋ねてもいないのに、依頼者側があれこれ条件を付けてくるというのもおかしな話で、それをまたおかしいとも思わずに平気で言ってのけてしまうあたりがさすが霞が関ですね。世間知らずぶりが炸裂しています。この二つの「予防線」は私にとってどうでもいい事柄でしたが、随分と用心深いものだなという印象を受けました。 東京・霞が関地区  出所:国土交通省ホームぺージ(https://www.mlit.go.jp/gobuild/kasumi_kasumi_kongo_kasumi_kongo.htm) だいたい国が助けてくれるものなら、とっくの昔に助けられていたはずなんですね。いったいどれだけ一人で闘ってきたか。何の後ろ盾もない個人がたった一人で企業を相手にするわけですからね。です

在宅校正、赤ペン1本で副収入!?

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Photo by 和 平 on Unsplash   『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』―  2016  年放映のテレビ番組ですが、一般にはおよそ知られていない職業を扱うドラマでも視聴率が取れる人気女優の力はすごいものですね。「こんな仕事があるのか」「校閲ってこういう仕事なのか」― このドラマを通じて初めて知ったという方も多いのではないでしょうか。今回の記事タイトルは「在宅校正、赤ペン1本で副収入!?」― 末尾の感嘆疑問符は「何でしょうね!このフレーズは?」という私の驚倒と疑義を表しているのですが、校正・校閲の仕事に興味・関心がおありの方にはこの手の詐欺的文言に躍らされることのないよう願うところです。 出所:日テレ ホームぺージ( https://www.ntv.co.jp/jimisugo) 本日は校正・校閲の仕事について書いてみたいと思いますが、一言で仕事と言いましても範囲が広いものですから、ここでは一つ「筆記具」を切り口に進めてまいります。この筆記具というのも扱うものが書籍か雑誌か、リーフレットかポスターか、チラシかカタログか等の別によって用具が変わってくるのですが、私自身がこの  10  年余り、書籍をメインに仕事をしていますので、今回の記事では書籍に限ったお話をいたします。 下の写真は私物の一部を撮影したもので、上から順に色鉛筆グリーン、シャーペン  0.5 、 0.3 、ちなみに芯の濃度は薄めの  H ~ HB 、中間の  2B 、濃いめの  3B ~ 4B  を常に用意しています。それから赤ボールペン  0.38 、 0.5 、 1.0 、マーカーはイエローとオレンジ、青ボールペン が 0.5 。これらをよく使っていますね。表題にある「赤ペン1本」は事実に即しておらず、それだけでは仕事にならないのが実際です。 上から二つ目の画像ではご覧のとおり、出版社勤務の校閲者を演じる石原さとみさんが赤の色鉛筆1本を手にしていますね。着ている服も口紅の色も赤で統一されています。分かりやすい、伝わりやすい、摑みやすい。限りあるスペースですからこうもなるでしょう。視聴率のかかった番組宣伝用の大切なカットですから、インパクトの強いものが求められるのは仕方がないことだとも思います。ただそれとは別の話として、こうしたシンボリックな物の見せ方というのは何につけても望