ストーンペインティングを始める




たまたま新しいことを始める時期が、季節でいうなら〈芸術の〉秋に該当。タイトルの通り、ストーンペインティングを始めました。まずは石探しからでしたが、いろいろと調べてみた結果、インドネシアのバリ島で採れる天然石を使うことに決定。大阪市生野区の「バリ雑貨 バリテラス」(https://www.rakuten.ne.jp/gold/bali-terrace/)を通じて容易に手に入れることができたのはラッキーでした。バリには行ったことがないのですが、海を望む景色が本当に美しく素晴らしいと思います。

Kelingking Beach, Bali, Photo by Nattu Adnan on Unsplash


出所:バリ雑貨 バリテラス(楽天市場)ホームぺージ(https://item.rakuten.co.jp/bali-terrace/c/0000000164/







石の形はご覧の通りバラバラで、色は淡いピンク系。傷があったり欠けていたり、表面もスルっとしていたりザラっとしていたり、天然石なので当たり前のことですが同じものはありません。うっすらと粉が付いているので水洗いをするのですが、上の画像の石はまだ洗う前、大阪のバリテラスさんからこちら東京の自宅に届いたばかりのものです。

洗って充分に乾かしたあと、今度は下地塗りに取りかかります。ストーンペインティングは、この下地塗りをしなくてもいいし、してもいい、それぞれで作風の違いも表れます。初めてのことですので何でもやってみたいという好奇心から、私は下地塗りをするほうを選びました。また、下地を塗ったほうが上にのせるアクリル絵の具の発色が良くなるそうなので、その点もポイントでした。



1度目の塗りを終えた石です。刷毛、ガラスボウル、ザル、布巾はすべて100均で、ブルーシートはホームセンターで購入しました。このザルは受け皿とセットで透明の蓋付き、本来は食品用の水切りザルですからキッチン用品です。

いよいよ塗り付ける直前ともなると若干緊張しました。「さすが初心者だね!」という感じです。何しろ絵心はゼロ、いやゼロというよりマイナスが付くレベルといったほうが正しいかもしれません。小学生の頃の図工の成績は5段階で2ぐらい、中学生になっても10段階で2か3か良くて4。いまだに犬と猫の違いが分かるようには描けませんし、馬や牛など四本足の動物も、足の部分は棒線を縦に4本引く以外に描き方を知らないといった力量の無さです。

下地塗りに使うのはジェッソという乳液状のとろみのある液体で、これを適量の水と合わせてかき混ぜます。購入したジェッソの容器の背面に「2~3度塗り重ねるとより美しく仕上がります」と書いてありました。





2度目の塗りを終えた石です。先述のように、販売元の助言として「2~3度」とありますので、3度の塗りを行いました。手に刷毛を持って塗りつける作業も、またひとつ練習になるのでやってみたかったというのもあります。



これで片面の塗りは終わりです。もう片方の表面も同じように3度の塗りを行いました。上の画像の石は、両面の下地塗りが無事完了し、充分に乾いている状態のものです。

塗り始める前の緊張感は意外なほど早々にすっ飛んでしまい、1度目の塗りがまあまあ上手くいったことで簡単に気を良くしたものですから、どんどん楽しくなっていきました。そんな短い時間のうちにと不思議な感じもするのですが、しかしそういうものなのか、人間というのは放っておいても「学ぶ」のでしょう。手のさばきもみるみる軽快になっていくのが分かるので、もう面白くて仕方がないわけです。

乾かしている間も時間を持て余すということはなく、どんな色で配色で、どんな形でデザインでというふうに、石ひとつで表す〈世界〉をド素人なりにあれこれ考えながら、紙に下絵を描いたりします。下絵の時点ですでに下手なうえ要領も悪いので、本当にやりがいがあります。初心者ゆえの集中力も半端ではないせいか、ひと作業を終えたときには達成感に包まれ、さらには爽快感さえ覚えます。「幸せの国・ブータン」の民ではなくともどんどん幸福度が増していくという、まさに文字通りの「一石」二鳥か三鳥かといったところですね。

実は子どもの時分にお絵描き教室に行ったことがあるのですが、たった1回でやめてしまいました。理由は今でもはっきり覚えています。何を描くかを先生が決めたからです。何でも好きに描いてみてねと言われていたら、少なくとも2回は教室に行っていたのではないかと思います。幼稚園児の頃からすでに、人に命令されることが大嫌いでした。あれから何十年もの歳月が流れ、いよいよ今度は好きなように楽しんでやっていくことができるでしょう。

それにしても、いったいなぜ唐突にこんなことを始める気持ちになったのかは自分でも分かりません。あるいは唐突なのではなく、時機到来ということなのかもしれないとも思います。ストーンペインティングを始めることに決め、石の入手に至った頃、1冊の本との出会いがありました。

著者はアメリカ人のベティ・エドワーズ、邦題は『内なる創造性を引きだせ』―― タイトルを見る限り、よくある自己啓発本のように思われるかもしれませんが違います。デッサンの方法を学ぶことができるのですが、技巧の説明に偏った単なる教本に留まらず、「視覚」「デッサン」「創造性」の連関とその総体を真のテーマとしているために、非常に興味深い内容となっています。



「なぜ」始めるのか、どうしてそれが「今」なのか ―― 説明不能なままでいた私の頭の上に「幸い天から降ってきた」かのような見事な文章を見つけましたので以下に引用し、今日の記事を終えたいと思います。この一節を目にした私は「なるほど、説明は不要か」と納得、ハイオシマイと相成りました。



    なにかを創造しようとする精神は
  消えかけた石炭の火のようなもので、
  気まぐれな風にも似た見えない力を受けて
  ほんのいっとき赤く燃えあがる。
  この力はうちなるところから生じるものであり……
  人間の意識の部分では、それが近づいてくることも
  遠ざかっていくことも予見できない」
         ――パーシー・ビッシュ・シェリー               



書誌情報:ベティ・エドワーズ『内なる創造性を引きだせ』高橋早苗訳、河出書房新社、2014年
(河出書房新社ホームぺージ書籍案内URL:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309275048/


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