小説の校閲をやらない校閲者もいる ~ マイケル・サンデル大先生をお手本に『これからの「お金」の話をしよう ―― ずっと生き延びるための校正料金』


画像:Harvard University(https://scholar.harvard.edu/sandel/photos


校閲イコール小説だなんて思いもしていないのは、当の校閲者ぐらいでしょうかね。「小説の校閲をやらない校閲者もいる」―― これは私自身がそうなんですよ。自慢話ではありませんけどね(笑)逆に自慢できない話ではないかと思いますが、 ただひと口に校閲といいましても、書籍というのは皆さんもご存じのとおり、いろいろなものがあると申し上げたいわけです。


小説の仕事を請けない理由は好きじゃないからで、出版社にもそう伝えてあります。ですから小説の依頼は来ません。ゼロです。出版社の社員の方々を相手に「小説は好きじゃないからやらない」などと発言すると、どんな言葉が返ってくると思いますか。「分かりました」で簡単に終わりです(笑)そんな口をきいたところで驚かれはしませんし、ドン引きなどもされません。大丈夫です。


あ、そういえば昔、もう十数年前ですが、某出版社の編集者兼採用担当で1名いましたね。「え~? だってさ~、校閲やりたいんでしょ~? 校正の人ってフツー小説やりたがるもんじゃないの~?」――この口のきき方ね。ぶっ飛ばされてえのかてめえ。笑って言ってましたよ、禿げたおっさんが。こちらも笑みを浮かべつつ「肝心なことをお尋ねしますが、御社の文字単価はおいくらですか?」と返しますと「34銭。ま、スタートはね!」とのこと。有名な出版社ですけれどもね。ここは大きな注意点ですが、立派な社名と校正料金が比例しないのは未だに珍しいことではありません。


昨今でいえば〈やりがい搾取〉のいい見本です。「馬鹿かこいつ」のひと言でしたね。「それですと食ってけないなら自殺でもしろって安値ですよ」と返しますと「アナタ面白いこと言う人だねえ~、その意気だよ!」――こいつはほんとに馬鹿だったというお話なんです。続きがまた驚きでしてね。「これさ~、いま持ってきてるんだけどやらない?」――大きな紙袋からゲラを取り出して見せるんですね。「英語いっぱい出てくんだよね~、やりがいあるでしょ!」――馬鹿は死ななきゃ治らないんですよ皆さん。〈馬の鼻先に人参ぶら下げろ作戦〉の実例です。


出版業界の面積デカすぎる暗部がここなんですよ。多くが今も変わらない。大問題だと思いますね。いつまでもそんなことでは能力がある人でも続けられない。およそ誰しも経済が先に立つわけですからね。そして若く未熟な人間にはなお厳しい。端から泥水を飲むことを強いているようではだめなんですよ。「育成」は豊かで温かく、痛みや不安を伴わないものであるべきです。


さて。話を戻して大方の出版社が「小説やらない校閲者宣言」にびくともしないのはなぜかといいますと、小説だけを発行しているわけではないからですよね。小説ではない書籍もバンバンボンボン出している。自分はもっぱら小説以外の本の校閲を行なっています。そう、小説は請けないのですが、作家の方々がエッセイをお書きになることは多々ありますよね。そちらは請けています。


取引先が分かってしまいますので、ここに書名を記すことは今後もありませんが、著者名を挙げるだけならセーフかと思いますので、例えば五木寛之さん(笑)――過ぎた話とはいえ、生意気にも私を笑った某出版社の編集者兼採用担当の禿げたおっさんね、幸いこの記事を目にすることがあったら死ぬまで笑ってていいからな、分かったか? だいたいね、校正者でも校閲者でもない人間が、校正・校閲の採用担当やってる時点でおたくの会社は半分終わってるからな、そこも分かっとけよ?(笑)



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