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仕事と趣味と語学と大学で忙しい

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写真は私物の級数表。 これに関連して後ほど少し書きますが、以前 日本エディタースクールで購入 したもので、もう何年使っているでしょうかね。思い出せません。過ぎたことをどんどんどんどん忘れるようになりました。例えば「昨日の夕飯は何だったっけ?」――この程度ですでにハードルが高く〈中堅私大〉レベルです。 そんな調子ですから、A社の直近の案件は何だったか、つまり「このあいだこの会社でやったのは何だったっけ?」ともなりますと〈難関私大〉レベルで、まず答えが出てこない。わざわざファイルを取り出して記録を見ないと分からないうえ、書名や誌名を見たところで「そうだったっけ? もっと前にやった気がするけどな」といった具合にかなり間抜けな感じです。 どう転んでも1日は24時間。 やることを詰め込みすぎているのかもしれません。タイトルのとおり「仕事と趣味と語学と大学で忙しい」毎日を過ごしています。最優先はもちろん仕事。小市民ですからね(笑)――そして趣味のストーンペインティングと詩作。 ストーンペインティングは昨秋から ですが、詩作は十代終わりの同人誌投稿に始まり、周期的に訪れる創作意欲が湧くときに限って書いています。たまたま今がその時ということですね。 語学は英語のリスニングに集中、無料学習サイト「 BBC Learning English 」を利用しています。日本メイドの教材に面白味の無さや手詰まり感を覚える人は、お試しになってみてはいかがでしょうか。 出所:BBC Learning English ホームぺージ( https://www.bbc.co.uk/learningenglish/english/course/newsreview ) それから大学ですね。 2021年に卒業した放送大学 に再入学していますのでその勉強。来学期からのコース変更に先んじて不得意中の不得意分野、しかし面白そうでたまらない理系科目の放送授業をインターネットで視聴しているのですが、すでに分からないところが多すぎます(笑) 出所:放送大学ホームぺージ( https://www.ouj.ac.jp/gakubu/ne/ ) とにかく「次これ、次これ、次これ、次これ、はい寝る」と大変規則的ではあるのですが、そうしてどんどんどんどん先へ先へと進む活力が漲りすぎている日々のせいで、過ぎたことは等分に忘れていって

好きなことが得意分野になる校閲の仕事

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  Photo by Steven Libralon on Unsplash 校閲の仕事は、自分の好きなことが実務で活きてくるケースがあります。映画、音楽、演劇、絵画、グルメ、サブカル、スポーツ、旅行、何でもいい。学問分野も同様です。歴史学、宗教学、民俗学、人類学、考古学、言語学、政治学、経済学、社会学、化学、数学、生物学、物理学、宇宙科学等々、もっとあるでしょう。そのほかIT・金融・労働・福祉・教育・医療関係など、この〈世界〉は多岐に及び、社会におけるそれらの発現の一つとして、数多の書き物が出回っているというわけですね。市場への流通を前に、その制作工程において一定の〈面積〉を占めている仕事の一つが校閲です。 自分に「できること」は多くない、あるいは何もないという人でも、自分の「好きなこと」となれば違ってくるのではないでしょうか。〈好きこそ物の上手なれ〉という言葉もあるように、好きで夢中になれることのある人は、誰に言われなくても対象に向かって突っ込んでいくものですよね。そんな「何か」に関してならば、おのずと知識が増していくものですし、身体的な実践を伴うことである場合には、知識に加えて上達や熟練も見込まれます。そうした過程の只中にあったり、何らかの到達点に至ったり、ある一定の成果を得たりする、すなわち「ただ好きだっただけのこと」が結果として身に付き、自身の特徴的な能力にまで昇華した場合、それは職業人としての〈血肉〉となって、校閲という一つの仕事においても活かされるようになる。校閲ジャンルの「私の得意分野」と化すことがあるわけです。 身近なところで例を挙げれば、競馬歴30年余のフリーランスで、競馬新聞の仕事を長年やっている知人がいます。自分は賭け事と無縁で来ましたので、競馬新聞はどのように校閲すればよいものか見当がつきません。競馬新聞は手に取ったことすらないんですね。ですから仮に話があったとしても、できて校正、間違っても校閲は請けることができません。それから料理が好きで腕前もセミプロレベルではないかという、やはりフリーランスで女性誌複数のレシピ欄の仕事をもう10年以上やっている知人がいます。調理や料理、食材や器具には、外国語も含むさまざまな言葉があるのでしょうし、「ここで『茹でる』はおかしい」「そこで『いちょう切り』はない」「絶対『5分程度』はありえない」等々、突っ込

「天才ひとり選ぶならこの人かな」の井上陽水

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井上陽水さんは、もう〈井上陽水〉というので一つのジャンルではないでしょうかね。 かっこいいんですよねぇ・・・「クレイジーラブ」 日本語が母語ですと聞こえるまま歌詞がすべてわかるのでいいですねぇ・・・「とまどうペリカン」 これも日本語が母語でなければ歌詞の凄さがわからないんですよねぇ・・・「Make-up Shadow」 この人には言葉が見つかりませんしその必要もないかもしれませんねぇ・・・「東へ西へ」 *****

校閲に必要な三つの能力

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  Photo by Shumilov Ludmila on Unsplash 仕事は大方書籍の校閲だと言うと「すごいですね」と返ってくることがある のですが、おそらくそれは、なんでもかんでもよく知っている、ものすごい知識量を持った人なのだと誤解するせいではないかと思います。なんでもかんでもよく知っている人など、この世にひとりもいないはずですし、自分を例に挙げれば、なんでも知っているどころか、知らない、分からない、興味もなければ関心もないことのほうが圧倒的に多いですね。 校閲に必要なのは第一に「ここは正誤を確かめないとだめだな」と〈問題の山〉の部分が百あれば百すべて拾い上げる能力。第二に「それを確実にするために当たるべきはここだな」と〈解答の家〉のある場所に誤らず辿り着くか、端から正解を知っているかの能力。第三にそれらを提起する際、編集者と著者が再考・撤回・修正等へと導かれうる適切な言葉を用いて的確に伝える能力。これはコミュニケーション能力とも言えますね。 最後の第三については、こちら側の指摘の根拠となった参照資料を提示するのが良いと思います。目にすれば明らかですから実効性がありますし、編集者と著者が改めて調査し、確認をする作業に費やす時間と労力を省くこともでき親切です。 もう少し細かに言えば「ここはこうですよ、そこはこうですよ」と、あくまでこちら側が出した結論のみをゲラに書き込むような〈言いたい放題〉の在り方では、たとえそれが正しくても先方とて大人ですから、言われるがまま即座に応じることはなかなかできないものですよね。「これのどこが違うの?」「何を根拠に言ってるの?」という反応は、自分の身に置き換えても、ごく自然なものだと思います。先述した「コミュニケーション能力」は、ここのところを指す重要な部分となります。 「伝えたい、分かってほしい」――そうであるなら口だけではなく態度で示す、そうと言い換えることもできるでしょう。誠実さですね。「そのぐらい言わなくたって分かるでしょう?」という手前勝手な在り方は、どんな仕事においても、また様々な人間関係においても「それでは通らない」幼稚で厄介なものだと思います。 先に挙げた三つの能力が求められ続ける一冊の本の〈記述の海〉を単独で進み、大波小波をかきわけながら最後の最後の一行まで気を緩めることなく集中し、優れたフォームと極力速

真冬もアート、継続こそ力なり

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昨秋から始めたストーンペインティング。画用筆や筆洗バケツ、パレット代わりに使用している小さなガラスボウル等々に付着したアクリル絵の具を綺麗に洗い落とすための石鹼水作りも人生初の試みです。筆洗い液というものが画材メーカーから販売されてはいるのですが、あえて手間がかかり時間も要する地味な作業を自ら進んで行なうことにしたのは、お金さえ払えば大方容易に片付いてしまう便利でいい時代のことを、それだからつまらないんだよな、頭も体も鍛えられないんだよな、令和になっても「北の国から」の黒板五郎に感動してるのとも矛盾するんだよなと、諸々思うところがあるからです。上の画像はキッチン用品のスライサー、1グラム単位で重さを量れる計量器、そして主役の固形石鹼です。 この石鹼というのも石鹼と名が付くものなら何でもいいというわけではなく、純石鹼分のパーセンテージが高くなければ用をなさないので、98%の高純度品を入手しました。ドラックストアで簡単に見つかる商品です。これを片手に摑んでスラッスラッスラッスラッとひたすら削っていると、右のボウルでご覧いただけるように少しずつ積もってまいります。「白雪の詩」というネーミングも確かに頷けるのですが、自分の第一印象としてはゴボウのささがきでしたね。 次に熱い湯を用意します。削った石鹼が積もるボウルに適量を注いで、ユラユラユラユラとしばらくかき混ぜていると、下の画像のように石鹼の形は消え失せ、液体に変わります。「できた!」――生まれて初めての自家製石鹼水です。 「簡単じゃん、簡単じゃん・・・」――嬉々としてプラスチック製のスプレーボトルに流し込み、残りは大きめのガラス瓶に詰めて蓋をします。適宜スプレーボトルに補充していく算段ですね。「成功、成功・・・」と気分を良くしてしばらく目を離していると、成功ではなく失敗でした。うまくいったはずの石鹼水が固まってしまいましてね。化学の知識がマイナス100ぐらいの人間ですから説明はできません。「だけど高純度ってことに変わりはないからな・・・」「想定外の化け方をしたとはいえ元は石鹼なんだからな・・・」と諦めきれずに引っ張りました。そして何より「もったいない」の一言です。――「これでもいいじゃん、使おう、使おう、まったく使えないってこともないだろう・・・」と気持ちを切り替えたところ、これが大正解。まずひとつに、布地の染み抜きに抜

中小企業庁、名指しの調査協力依頼

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毎年のように秋になると「やってくる」中小企業庁からの「あなたさまは取引先からいじめられていないでしょうか」の調査協力依頼。以前は封書での郵送・返送形式であったものが、いつからでしたか画像のようなハガキで到着、オンラインでの回答形式に変わりました。たまたま忙しいときにぶつかってしまうと時間が取れず、回答不可となることもあるのですが、今年は若干忙しい合間を縫って提出を済ませました。と言いますのも、年度によっては「何か困ったことは起きていませんか」というお伺いのみなのですが、そのほかにもうひとつ「この取引先との間で問題は生じていませんか」と中小企業庁側が特定の企業を名指しして調査協力依頼をよこすケースがあり、今年は後者であったためです。 我々回答者側からの〈よくある質問〉Q5には、ご覧の通り「調査回答したことや回答内容が親事業者などに知られることはありませんか」と記されています。回答することに不安を覚える人々が少なくはないのでしょう。取引先から「やり返されはしないか」と恐れる人々が存在するということですね。逆ギレすなわち「報復行為」と称されるものですが、察するに相も変わらず体質が古く頭の悪い親事業者が跋扈しているのでしょう。本当に残念なことですね。いや我々のほうがではなく旧態依然とした懲りない企業のほうがですよ。そんな「強者」まがいの取引先を相手とする我々「弱者」設定の労働者を安堵させる文言がA5に記されています。「本調査にご協力いただいたことについては、秘密を厳守いたします」―― なるほど。「それなら安心、回答しようか、実際こんな困ったことが起きているし、聞いてくれるものなら聞いてほしい、助けてくれるものなら助けてほしい」――そんな感じの流れになるのでしょうかね。よくは分かりません。国に泣きついたことは過去にありませんのでね。 私に関して言うならば「いやいや、名前出してくれて結構ですよ、全然オッケーです、永山です、永山明子です」――「あの、永山さんて女性なんですけれどもね、これがまたやたらと弁が立つ感じの方で、お話を伺いましたらこんなこともある、あんなこともあると仰っているんです」―― そんな調子で思いきりやっていただいて結構なんですよね。何が言いたいか。世の中びくつくばかりが能じゃないってことです。人を頼りにするのもいい、そうした「気の毒な話」に耳を傾けることを職務と

「この人が死んだときは泣くだろうな」の桑田佳祐

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1978年リリースのファースト・アルバム「熱い胸さわぎ」 若い頃、桑田佳祐さんのことが死ぬほど好きで、サザンオールスターズのファンクラブに入っていました。 定期的に自宅に郵送されてくる会報も、楽しみでしかたがありませんでした。 タイトルの通り、この人が死んだときは泣くだろうなと今から思っています。 志村けんさんにしても仲本工事さんにしてもそうなのですが、根が真面目で、仕事熱心で、 多くの人々をたくさん楽しませた方に限って、その死がたまらなく悲しいのはなぜなのでしょうね。 桑田佳祐さんが現在のような全国区の大物になる遥か前には、今と異なる「まさにその時」の魅力が当然にあり、 時を経てもそれを忘れることは大変に難しい、というよりそれは、どうにもこうにも不可能なのです。    1、青山学院大学でバンドを結成してくれてありがとうございます。  2、芸能界にデビューしてくれてありがとうございます。  3、こんなに長く歌い続けてきてくれて本当にありがとうございます。 安いプラスチックのすぐに壊れる玩具のようなこの国の政治家には言葉もありません。 美しい物や美しい人、美しい才能や美しい世界を眺め、それらで自分を満たしたい、 始めてまもないストーンアートも、そんな希求の表れのひとつなのかもしれないと思います。 今日は、素晴らしく上等な彼の楽曲とパフォーマンスを楽しめる動画をいくつかご紹介します。 それではまた。 DJ・コービーの伝説 ボディ・スペシャルⅡ マンピーのG★SPOT 旅姿六人衆 愛の言霊~Spiritual Message~ *****

アクリル絵の具を選ぶ芸術の秋

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唐突に始めたストーンペインティングですが、キャンバスとして用いる石のほかにもいろいろ揃えなければならないものがあり、それらをネットで調べたり、画材販売のオンラインストアを探したり、近場の実店舗にもリュックを背負って出かけたり、そんなこんなの結構な時間が異様に楽しくて仕方がないという彩り豊かな日々を過ごしています。 上の画像はターナー色彩(以下、ターナー)のアクリルガッシュという絵の具で全 36 色のセット商品。栃木県足利市のマルニ額縁画材店オンラインストアを通じて購入しました。 出所:マルニ額縁画材店ホームぺージ( https://www.art-maruni.com/ ) 新規会員登録をした人には 300 円の即時プレゼントがあり、初回の注文から早速利用しました。買い物の都度、購入額の3%にあたるポイントが付与され、次回以降の注文の際に使うことができるのですが、ホームぺージ上でたまたま目にとまった「レビューを書いてポイント2倍キャンペーン」にももちろん参加。3%が6%になるのですから大きいですね。まとめ買いをした中からこの多色セット1点を選んで先日レビュー投稿を行いました。下の画像が実際のレビュー、投稿者名は当ブログの筆名(2022年10月16日時点)と同じシルヴィです。 ( https://www.art-maruni.com/products/detail.php?product_id=4670&category_id=2029 ) ターナーのアクリルガッシュは全 221 色で、上のレビューにも書いているようにバリエーションが豊富です。「これからたくさんの色が待っている未来のほうがいいだろう」と思いましたので、メーカーは他にもいくつかあるのですが、アクリル絵の具はすべてターナーで揃えることに決めました。 出所:ターナー色彩ホームぺージ( https://turner.co.jp/art/gouache/index.html ) 前回の記事でも触れたように「絵心はゼロである」「犬と猫を描き分けることができない」「四つ足の動物の足は棒線を縦に4本引く」という次元でありながら「この色は絶対に使いたい」などと強い希望がすでにしっかりとある面白い状態ですので、上記 36 色セットとは別に購入した絵の具もあります。 下の画像になりますが「ラメカラー」に「カラー

ストーンペインティングを始める

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たまたま新しいことを始める時期が、季節でいうなら〈芸術の〉秋に該当。タイトルの通り、ストーンペインティングを始めました。まずは石探しからでしたが、いろいろと調べてみた結果、インドネシアのバリ島で採れる天然石を使うことに決定。大阪市生野区の「バリ雑貨 バリテラス」( https://www.rakuten.ne.jp/gold/bali-terrace/ )を通じて容易に手に入れることができたのはラッキーでした。バリには行ったことがないのですが、海を望む景色が本当に美しく素晴らしいと思います。 Kelingking Beach, Bali, Photo by Nattu Adnan on Unsplash 出所:バリ雑貨 バリテラス(楽天市場)ホームぺージ( https://item.rakuten.co.jp/bali-terrace/c/0000000164/ ) 石の形はご覧の通りバラバラで、色は淡いピンク系。傷があったり欠けていたり、表面もスルっとしていたりザラっとしていたり、天然石なので当たり前のことですが同じものはありません。うっすらと粉が付いているので水洗いをするのですが、上の画像の石はまだ洗う前、大阪のバリテラスさんからこちら東京の自宅に届いたばかりのものです。 洗って充分に乾かしたあと、今度は下地塗りに取りかかります。ストーンペインティングは、この下地塗りをしなくてもいいし、してもいい、それぞれで作風の違いも表れます。初めてのことですので何でもやってみたいという好奇心から、私は下地塗りをするほうを選びました。また、下地を塗ったほうが上にのせるアクリル絵の具の発色が良くなるそうなので、その点もポイントでした。 1度目の塗りを終えた石です。刷毛、ガラスボウル、ザル、布巾はすべて100均で、ブルーシートはホームセンターで購入しました。このザルは受け皿とセットで透明の蓋付き、本来は食品用の水切りザルですからキッチン用品です。 いよいよ塗り付ける直前ともなると若干緊張しました。「さすが初心者だね!」という感じです。何しろ絵心はゼロ、いやゼロというよりマイナスが付くレベルといったほうが正しいかもしれません。小学生の頃の図工の成績は5段階で2ぐらい、中学生になっても10段階で2か3か良くて4。いまだに犬と猫の違いが分かるようには描けませんし、馬や牛など四本足の動

ギリシャの素敵な本屋さん

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画像:Atlantis Books( http://atlantisbooks.org/home/ )※以下画像同 写真はギリシャのサントリーニ島、2004年に開業した書店、アトランティス・ブックス。 ひとり写る駆け足の少年の醸し出す躍動感がまた魅力的なショットです。 私は東京都心に生まれ育ち、若い頃から複数の外国語を学んだり、研究者を志望していた時期もありましたので、書店といえば神田の三省堂、日本橋や丸の内の丸善にそれこそサンダル履きで足を運ぶことも多かったのですが、それからだいぶ時が経ち、書店についても本についても感じることが様々に変化しています。 売れる本が良い本とは限りませんし、それなら売れない本が良い本かというともちろんそうとも限らない。大型書店に一歩足を踏み入れれば、ただただ目に飛び込んでくる大量の本。敢えていうなら掃いて捨てるほどある本という本。もちろんのことそれらはみな立派な商品として並べられ、あるいは平積みされていたりするわけですが、近頃ではそうした空間に身を置くと大変疲れを感じるようになりました。 店舗の立地が良い、売場面積が広い、建物の外観が洗練されている、お洒落なカフェも併設され、フロアには休憩用の大きなソファが設置されている。総じてそんな在りようの大型書店では、それこそ足が棒のようになるまで立ち読みをしては場所を変え、また立ち読みをしては移動するといったことの連続で長い時間を費やすことが常でした。 対してこのアトランティス・ブックス。サントリーニ島でただ1軒の書店は、陽光の恵みに丸ごとすっぽり包み込まれたかのような小さな店ですが、もしもそこに「私が焦がれる1冊」や「わが子に与えたい1冊」や「友人に贈りたい1冊」などがストンと置かれていたとしたら、本というのはそれでもう、人と暮らしと人生に見合って足りているといえるのではないかという思いがするのです。 店内 このアトランティス・ブックスについては以前、当ブログの記事で触れていますので、よろしければご訪問ください。 いつか旅をして、訪れてみたいと思っている場所のひとつです。 「現代ギリシャ語、独学開始」 (2021年11月10日投稿: https://sylviekb.blogspot.com/2021/11/blog-post_10.html ) 「胸躍るギリシャ、サントリーニ島」 (2021

アルジェリア、情熱出版人の物語

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今日は〈書店〉を舞台に描かれた物語をひとつ紹介したいと思います。 邦訳の書名は『アルジェリア、シャラ通りの小さな書店』―  2019年に東京・飯田橋の作品社から出版された一冊です。原著はフランス語で書かれており、タイトルは『Nos richesses』― ノ・リシェスと読んで「私たちの富」という意味ですが、原題と邦訳書のタイトルが全く異なるところに端から〈海外〉文学の距離や差異が感じとられ興味をそそります。 書名の日本語表現と文字遣いがいいですね。片仮名、漢字、平仮名3種の使用に加え、途中の読点も効いています。この短さの中に日本語表記の特異性が示され、音の流れもスラリとして耳に障りません。装画はアルベール・マルケ(Albert Marquet, 1875-1947)によるものでこれがまた魅力的。遠く離れた北アフリカの異国情緒を爽やかに伝えています。想像力が搔き立てられ、西のほうへ西のほうへと思いが馳せる。頭の中に心地よい風が吹きはじめ、今にも彼の地へ飛び立っていけそうなスイッチが入ります。著者はアルジェリア出身、パリ在住のカウテル・アディミ(Kaouther Adimi)― 1986年生まれの若い作家で聡明な印象を与える女性です。 出所:Kaouther Adimi on Facebook ( https://www.facebook.com/Kaouther-Adimi-109987733817799/ )   出所:SEUIL( https://www.seuil.com/ouvrage/nos-richesses-kaouther-adimi/9782021373806 ) 物語の始まりは1930年代半ばのアルジェリア。主人公は弱冠21歳の青年。ほぼ無一文で書店兼貸本屋兼出版社を立ち上げた実在の出版人、エドモン・シャルロ(Edmond Charlot, 1915-2004)― 文学にはかなり疎い私でもさすがに知っているアルベール・カミュを世に送り出した人物とのこと。店の名前は〈Les Vraies Richesses〉 ― レ・ヴレ・リシェスと読んで〈真の富〉― 本書を読み進めてまもないうちに現れる一節を引用しましょう。「読書する一人の人間には二人分の価値がある」(p.9) ― 可視化され数値化された物事にいとも容易く踊らされがちな現代において、本を読むという